平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

静岡県立美術館『出会えます あなたの愛する風景』 & 「ロダンな部分」  2010/11/15

kenbi7

静岡県立美術館の『出会えます あなたの愛する風景』の内覧会にお邪魔した。
県立美術館がこれまでに収集・研究してきた風景に関する作品を一堂に集めた展覧会で、古今東西の名作が並ぶ。
正直言って驚いた。風景に関する作品だけでも、これだけの質と量を我が県は所蔵していたのかと。

主任学芸員の泰井良さんもおっしゃっていたが(学芸員の力に改めて驚く!)、ヨーロッパの美術館では、自館がテーマとする美術品を、長期計画のもと、きちっとコレクションし続けることが生命線であり、そのことは美術館の存在意義とも直接結びついている。日本の美術館では他館との共同企画やパッケージを購入展示する企画展がどうしても多くなるが、本来は自館による普段からの研究成果を元に「我が眼で集めた作品」を、研究成果とともに時間をかけて丁寧に見せていく方がより重要なことなのだ。それが、25年の歳月をかけてやっと静岡県立美術館でも可能になってきたということなのである。言い換えてみるとこのことは、美術館という装置が上手に歳を重ねるということでもある。

今地方の財政は逼迫の一途を辿っている。それでも諦めずに、これだという作品を丁寧に追いかけて、タイミングをはかって引き寄せて来る力は、まさに学芸員の力量といえよう。
美術は直接生活の何ものも生み出さない。だから予算は容赦なく切る。これでは、人が人として育たない。リベラル・アーツliberal artsということについて、今こそ我がこととして考えなくてはいけない時期にあるのだ。liberal artsとは、遙か昔の「今ここでない他の文化」に憧れ、想いを馳せることだ。それが古典に学ぶということだ。

もちろん、「わたしの愛する一点」を探しながら絵の奥に広がる風景にたゆたうのもいいが、「成長する美術館」という視点をもって、『出会えます あなたの愛する風景』を観てみるのも、また一つの美術との関わり方であろう。

ところで、旅には、「出発の地」と「目的の地」というものがあるとするなら、今回この展示に、静岡県立美術館が新たに購入した18世紀フランスを代表する画家フランソワ・ブーシェの油彩画2点が飾られている意味が見えてくる。ブーシェの展示は単にお披露目としての位置づけではなく、「風景の出発点」でもあり、「旅の目的地」でもあるからだ。興味のある方は、併せてグランドツアーというある意味「リベラルアーツの総仕上げ」についても調べてみるといい。

いっしょに「旅に出掛けた」学生たちはどんな感想を持っただろう。
貴重な機会を与えてくれた静岡県立美術館の内田稔子さんに心から感謝申し上げたい。

【静岡県立美術館 ロダン館「ロダンな部分」】
                   (注:平野の勝手なネーミング)

静岡県立美術館のロダン館には、《地獄の門》 《考える人》をはじめロダンの彫刻32点が展示されています。

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「ロダンな部分」は、今後もつづきます。おたのしみに?



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