スキルアップ 2010/11/07
Sくん、Tさんへ。
確か『帰田録』が出典だったと記憶していますが、こんな話があります(細部は自分で調べてね)。
ある弓の達人が的を射て百発百中の腕を得意げに披露しているところに一人の油売りが通りかかった。
弓の名人は油売りに向かって「どうだ、すごいだろう」と鼻を鳴らす。
すると油売りが腰に下げていた葫蘆(ふくべ=ひょうたんのことね)の口に一枚の穴の空いた銭を置き、そのまま地面に据えた。そうして姿勢を正すとその口へと向かってまっすぐと油を垂らしはじめた。驚くことに、その油は、銭を一滴も濡らすことなくすべて葫蘆の中に注ぎ込まれた。そうして油売りはこう云った。
「ただ手慣れているだけですよ」。
弓の技術など毎日やっていれば、自然と身についてしまう「スキル」なのだ。このことは、だからスキルは大切である、と教えているのではない。大切なことはスキルのその先にある。もっといえば、大切なことはスキルなんてものをすっかり忘れてしまったところにある。別の言い方をするなら、それは絶えず自分自身の技を疑い続け、精進することだ。
だから、わたしはあえて手垢の付いた「スキル」という言葉を使わないし、その言葉が無自覚に使われて文章や話はまず疑ってみる。
「惟だ手熟するのみ」。この言葉をわたしはそういうふうに理解しているのですよ、Sくん、Tさん。
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Eさん、Nさん、Oさん、そういうことで。つづく!
あ、Hさん、イモリは簡単に飼うことができますよ。
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