草谷桂子さんのシリーズが始まった 2010/05/25
作家で「トモエ文庫」主宰の草谷桂子さんの、静岡新聞シリーズ(全6回)が始まった。相変わらず柔らかな語り口ながらが、びしっと芯の通った文章である。
【本が語る図書館 国民読書年に寄せて】
その一「くつろぎと交流の場」
図書館は、古今東西の資料が蓄積されている市民の知の財産です。日本より百年進んでいるという図書館先進国の欧米では、本の中でも当たり前のように日常的に図書館を利用しています。今年は国民読書年。読書の心強い味方である図書館の魅力を、図書館が重要な役回りを演じている本を通して、6回にわたって紹介します。
『としょかんライオン』(ミシェル・ヌードセン作 ケビン・ホークス絵 福本友美子訳 岩崎書店)では、大きなライオンまで図書館の利用者です。館長さんは、「きまり」さえ守れば、ライオンだって誰だって受け入れる人。温和なライオンは、すぐに子どもたちと仲良しになりました。でもある日、ライオンは「きまり」を破ります。館長さんが倒れたので、大声で吠えて職員に知らせたからです。「きまり」は大事にしても「きまり」に縛られない、居心地のいい図書館のようすが楽しく伝わってきます。この本の著者は、あとがきでこんなメッセージを寄せています。
「図書館って不思議な場所ね。誰でも入れるし、何でも出来そうな場所よ」
『翼の時間』(東逸子/作 ミキハウス)では、図書館で父親を待つ少女が、書棚の古い書物から抜け出した天使たちに誘われ、自在に空想の世界を堪能します。本の中には、異次元の世界に連れていってくれる鍵がぎっしり詰まっています。図書館にいくことは、自由に羽ばたける翼を持つこと。透明感のある絵から、静かなたたずまいの図書館にいる心地よさが漂ってきます。
図書館は赤ちゃんからお年寄りまで、誰もが本と出会える安らぎの場です。本だけでなく、人と人が出会い、集い、新たな何かを生み出してゆく「本と情報の広場」です。
二〇一〇年は国民読書年。二年前に衆参両院とも全会一致で決議し、採択されました。「文字・活字は人類が生み出した文明の根源をなす崇高な資産」と位置付け、心豊かな国民生活を実現させる願いをうたっています。その実現のために必要不可欠な公共図書館を、確実に未来に繋げていきたいものです。(静岡新聞 2010/05/19朝刊)
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