平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

ミミズが地上へ這い出す理由  2010/05/24

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『日経サイエンス』(2010.6) が大変興味深かった。なかでも動物行動学 Worm Charmers 『ミミズ遣いのワザ』(Kenneth Catania )、地面をゆらすとミミズが出てくるのはなぜか? かつてダーウィンが推測したように・・・、というレポートが秀逸だ。
釣り餌のためにミミズを捕獲する餌採集家は、特殊な木の棒を地面に打ち込んでから、この棒をルーピング・アイアンと呼ばれる金属片でこする。すると、おもしろいように大量のミミズが地上へと這い出してくるのである。しかも素早く。
考えてみてほしい。地上にはミミズの大敵である光や生物、例えば鳥や蛇、トカゲ、アリ、イノシシ、タヌキなどがたくさんいる。わたしがもしもミミズなら、みすみすそんな多くの敵のいる地上へとは向かわず、より地面の深い方へと向かって逃げることを考える。
にもかかわらず、ミミズはいっせいに地上へと向かって這い出してくるのである。
これまで餌採集家やある研究グループは、「人工的に作り出された音を大雨だと勘違いし、溺死を防ぐために地表へと這い出してくる」という説を唱えていた。だが、実際の大雨の日と、人工音の場合とで比較観察してみると、後者の場合の方が、大量に、しかも素早く地表に這い出して来ることがわかった。
実は、ミミズはこの人工的につくられた音を天敵のモグラの接近だと勘違いし、モグラが苦手な地表へと向かって逃げるという行動を取るのである。これは前述の通りミミズにとっても大きなリスクなのである。
実はダーウィンはこのことを既に1881年に著した(日本名)『ミミズと土』(平凡社ライブラリー)で推察している。観察に勝る方法はない。ダーウィンはそう教える。

そんなわけで、我々の知らない地面の下では、常にこんな生死をわける「事件」が繰り広げられているのである。
ちなみに、わたしの卒論は「ミミズにおける活性汚泥の生成」である。

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SPACで鈴木忠志演出の『エレクトラ』を観る。また、有度サロン『<空>と<海>、そして<金融>という空間からの脱出近代に代わる理念とは何か?』を聴く。また追って記します。

SPAC12


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