「せどり」という技 2007/07/22
ここ一週間で三名の方から以下の本を探して欲しいという依頼を受けた。注文ではない、依頼である。商売じゃないので。ネットで検索してみたけれど、見つからないということだ。ネットで見つからないのは当然だ。ネットにアップされている本などたかがしれている。
○昭和31年 河出書房『ビーグル号航海記』 世界探検紀行全集の第6巻
○昭和17年発行 朝倉文夫著『民族の美』 箱入り販売だったので箱付きのものを希望
○昭和29年発行 徳川夢声著『お茶漬哲学』(文藝春秋社)
共に原稿の資料にしたいので、なるべく早めに欲しいということだ。『ビーグル号航海記』は既に見つけた。明日依頼者にお渡しするつもりだ。
わたしはプロの「せどり師」ではない。ただ、平野は他の人よりおおくの書物を見ているだろうとおもっている友人、知人たちがこんな依頼をよこすのだろう。それから、きっと以下サイトの文章をお読みの方もいるだろう。事実、読んで依頼をしてきた方も数多い。
せどり
わたしはこういうとき、今まで膨大にスキャンしてきた古書店の棚を思い浮かべる。決して、「日本の古本屋」とか「紫式部」をいきなり検索するようなことはしない。早稲田の古書街、神保町の古めかしい木の看板、大阪や名古屋の「あの」店の棚などを漠然と、そうして一気に加速しながら思い浮かべる。ピンスポットで、本がキラッと輝くこともあれば、棚を右から左へとじっくり思い浮かべながら、そこに並んでいる本を見つけていくこともある。わかりやすくいえば、一度撮った写真を見直すような作業をしているのだ(きっと)。
今回依頼を受けた残り2冊は、もう、だいたいどこの古書店の棚に並んでいるか分かっている。あとは電話をしてみるか、直接棚を確認しに行くだけだ。
古物商、古物行商の免許も持っているが、店を出すわけでもないもわたしには何の役にも立っていない。最後に頼るのは、いかにふだんから膨大なものを見ているかだけである。そうして、ネットなんかよく分からん!という頑固オヤジが経営する古書店をいかに知っているかだ。