平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

日本平動物園「猛獣館299(にっきゅっきゅう~)」オープン  2010/04/17


日本平動物園(1969年8月1日開園)が、この3月29日に「猛獣館299(にっきゅっきゅう~)」をオープンさせた。
本日、テレビ静岡(フジテレビ系列)の番組『パロパロ』でこのオープンについて少しだけコメントさせて頂いたが、時間が足りなかったので、ここにまとめて書いておくことにする。

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まず、簡単に解説しておくと、「猛獣館299」では、1・2階がホッキョクグマ、ゴマフアザラシ、シロフクロウ、2〜4階にライオン、アムールトラ、ギャガー、ピューマ、ミーアキャットを展示してある。その醍醐味は、動物が、動物目線で、すぐ目の前で観察できること。そうして、それがより自然環境に近い生態的展示という手法で観察できることである。
ではわたくし平野が「猛獣館299」を写真を使ってご案内しよう。

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「猛獣館299(にっきゅっきゅう~)」のオープンにあたっての雑文(※箇条書き、順不動)

・ 今回のオープンでは、動物園入り口で入場料(大人500円、子ども無料)を払えば、「猛獣館299」には無料で入館できる。わたしは、この新施設を別料金にすべきだと考える(有料、と言うだけで反対!と言われそうですが)。きちんと入場料を徴収し、例えばそれを基金とし、希少動物の保護活動にあてるなど、目的をきちんとさせることで、動物園は単にエンターテイメントだけの施設ではなく研究機関であることを理解してもらうべきである。これこそが動物園を取り巻く環境教育である。事実、動物園の先進国では、この方向が一般的である。現状では、入場料で動物園の運営費の約三分の一程度しかまかなえていないことを利用者は知るべきである。

・ 日本でも1970年代から、動物が自然の中で暮らしているように展示する「生態的展示」の考え方が広がりはじめた。

・動物園では、単に動物を観察するだけではなく、その展示室のデザインを観察することで、逆に動物の行動を推察することができる(動物行動学、環境生態学)。

・日本平動物園を旭山動物園の物真似じゃないかと、陰口をたたく輩がいる。そんなことはさして重要なことではない。各地の動物園がノウハウを共有し、動物にとっての「環境エンリッチメント」を素早く整えることが最優先すべき課題である。

・ 1900年代の初め、モート式という堀を使ったパノラマ展示が始まる。観客と動物の間に堀(無柵式=モート式)をつくり、例えば、ゾウの後ろにサルが生息するように見える(実際にはこの二種は別のゾーンにいる)とった展示が可能となった。

・動物を観察する際に重要なのは、その動物特有の「ニオイ」である。くさい!という理由だけで、動物園からニオイを消しさってはいけない。そういった意味で、今回の「猛獣館299」はガラス張りの展示が基本だが、金網越しにニオイをかぐことができる場所も用意されている。

・ 自然界にいる動物は、そう簡単には餌を捕獲することができない。よって、いかに「餌を簡単に取れなくするか」ということも、動物が動物らしく生きるためには必要なことである。

・飼育員の持ち物、動物特有の展示室の掃除道具なども観察するとおもしろい。

・ 地面の広さが必要な動物もいれば、それよりも高さを必要とする動物もいる。生活のほとんどを木の上で過ごすサルの仲間は、地面の広さよりも高さが必要なのである。檻はただ広いというだけでは機能しない。

・ 動物園の動物は「常同行動」を繰り返す。キリンが鉄のポールをべろべろと舐め続けたり、ゾウが体を左右に揺すったりしているのはだれでも見たことがあるだろう。これは多くの場合ストレスによって発生する行動だと言われている。このストレスから動物を解放する具体的な対策を考える仕方を「環境エンリッチメントenrichment」という。

・ 動物を動物園に押し込むなんて許せない。人間にそんな権利などない。そういった考え方がもう一方で確実にある(「動物の権利」)。
http://www.alive-net.net/law/gainen/kenri-sengen.html
一方で、人間のために動物が有効的に使われるのならやむを得ないと考えるのが「動物福祉」という視点である。いずれにしろ、様々な視点で動物園を見ておくのがいいだろう。

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上の階で金網越しに見学する人々。下の階では、ガラス越しに観察する。動物はギリギリまで近づいてくる。動物と同じ目線の高さで観察が可能となる。

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木の上で休むという習性を活かした展示。真下から動物を観察できる。金網越しにきちんと動物のニオイもするし、運がいいと「ウン○」もかけてられてしまう(汗)

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ガラス一枚隔てて、すぐそこまで迫ってくる百獣の王。自分が獲物になった気分である。獲物に向かうライオンがそのときどのように筋肉を奮わせて動くのかもリアルに分かる。以前の展示では、はるか遠くで横になっているライオンしか見ることができなかった(要するに見えなかった)。

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たまには大人が一人でふらっと行く動物園も、細部が観察できていい。



お疲れ様でした。再びスタジオへ戻ります。

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