静岡大学卒業式 レヴィナス御大のお言葉を拝借して 2010/03/21
きょう3月21日(日)は静岡大学の卒業式。
卒業生諸君、おめでとうございます。
直接お祝いの言葉を伝えることのできなかった学生もたくさんいる。残念。
そこで一言だけ「贈る言葉」をこの場に綴っておきたい。
それは彼哲人エマニュエル・レヴィナス(Emmanuel Lévinas)御大がおっしゃっていた「忘恩」ということだ。r Lévinasという文脈の中で忘恩を理解するなら、恩を忘れなさい、という意味ではない。恩を忘れてしまうような人間を受け止めなさいという意味だ。師は、忘恩を着せられることは極限の寛大さを獲得するチャンスだと云うのだ。多くの人は、恩義を忘れる輩に対して許すことができない。だが、そこを乗り越えてこそ忘恩というものであって、それこそが人が最も成長できる機会であると教えるのである。人を許すことは難しい。「他者」を受けとめることは、もっとも困難なことの一つである。
他者とは、どんなにがんばっても絶対に自分と同化できないものをいう。物はいとも簡単に自分の自由になる。自由になるということは、同化するということだ。自然natureに対しては一見太刀打ちできないように思えるが、ある程度人間の自由になる(その結果が今の環境問題とある意味深く結びついている)。だが、どんな心理操作や科学的アプローチを駆使しようと、結局どうにもならいものが「他者」なのだ。その他者を受け止めることこそ、最も大事なことだとレヴィナス御大は教えるのである
卒業生諸君、社会では、常にこの難題がつきまとうことをお忘れなく。
ご卒業、おめでとうございます。
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