平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

読書介助犬って何?  2010/02/22

sora10


最新刊の岩波ブックレット№777 『子どもの共感力を育む 〜動物との絆をめぐる実践教育』(柴内裕子・大塚敦子)を、病院の待合室で一気に読む。
ところで「読書介助犬」(Reading Education Assistance Dogs 通称R・E・A・D)ってご存じですか。人が読書をするという行為を助ける犬、そう思いませんか。
これは1999年にインターマウンティン・セラピー・アニマルズという非営利団体が、子どもたちが犬に読み聞かせをするプログラムを図書館で始めたのがきっかけでおこったアニマルセラピーの一種です(サンディ・マーティンという看護師が発案)。本書はこの「子どもたちが動物(主に犬)に本を読み聞かせをすることで諸問題を解決する取り組み」の報告書の体裁をとっています。おもしろいのは、「子どもたちが犬に本を読み聞かせる」という点です。
ワシントン州シアトルには、R・E・A・Dプログラムを取り入れた「リーディング・ウィズ・ローバー」(ローバー・プログラム)という団体があって、活動の中心は、本を読むのが苦手な子どもたちへの支援です。病院やナーシングホームなどの訪問活動をおこないながら、主には地域の小学校、図書館、書店が活動の場。そこでは、子どもと犬とハンドラー(犬といっしょに活動する、いわゆるローバー・プログラムのインストラクター)が一組となって、「子どもたちが犬に本を読み聞かせる」をおこないます。相手は犬(という忠実な聞き手)ですから、読み間違ったからといって、軽蔑されたり、馬鹿にされたりして、プライドを傷つけられる心配もありません。結果、この読書行為によって「セルフ・エスティーム(自分自身を愛し、尊ぶ心)」が養われるというのです。

http://blog.seattlepi.com/bookpatrol/archives/190927.asp?from=blog_last3

日本での取り組みも既に始まっていて、ここでは(名前は出ていませんが)都内の小学校の障害のある子どもたちのクラスの取り組みが紹介されています。この小学校は隣りあった公共図書館と組んで、「子どもたちが犬に読み聞かせをするプログラム」を実践して成果を上げているそうです。

また米国の事例では、窃盗や麻薬など問題行動をおこした子どもたちが「介助犬を訓練すること」(生まれたばかりの子犬のケアなども)で、自分たちの心の動きもコントロールできるようになる、というのです。
大変に興味深い内容です。詳しくは『子どもの共感力を育む 〜動物との絆をめぐる実践教育』(岩波ブックレット№777)をご覧ください。


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