もっとも日本人らしい一日 2009/12/08
日曜日の平野は、もっとも日本人らしい態度で一日を過ごした。
京都は伏見稲荷の鳥居をモチーフにしたバッグ(伊兵衛製)を抱えてお出かけ。
昼過ぎに一本打ち合わせを済ませ、その足で長谷川賀子さんの彫金の作品展をのぞく。この人のテーマはいつも大胆である。そうして常に繊細なラインを創り出す。
足を伸ばして、イイイロ☆カズミさん、じょん☆じょんさんら四人が開催した作品展「モノプリミックス」へ。体験型のこのイベント、わたしはイイイロ☆カズミ先生のご指導のもとクリスマスカード作りに参加。うっ・・・改めて細かな作業に対する自分のセンスを疑う・汗。
で、次に訪れたのは、静岡大学人文学部言語文化学科の授業「静岡の文化」主催のイベント。それは「鏝絵師 森田鶴堂の世界」というテーマの成果発表会である。
鏝絵というとどうしても伊豆の長八ばかりにスポットが当たる。だが、この研究では、未開拓・未評価の森田鶴堂という人物とその作品に光を当てた。
とにかく会場となった安立寺(静岡市葵区春日)に展示・保存されている鶴堂の鏝絵や当日持ち込まれた軸の数々はひじょうに見応えがあった。鶴堂作品の美術的評価については今後専門家の視点が必要だろうが、この研究は下調査という地道な作業の大切さを教えてくれている。感心した。
次に宝台寺(葵区常盤町)へ移動して、tzuoI(ツドゥイ)というユニットのダンスパフォーマンス「こんなに晴れた冬のまんなかを」を観る。誘ってくださったのはこのユニットに参加する仕立士・高部葉子さん(全く偶然だが、確かこの寺にも大火で全焼するまでは森田鶴堂の鏝絵があったはずである)。
さて、このパフォーマンスで読み上げられた詩は草野心平の作品。草野といえば、わたしの中では「蛙」なのだが、今回のダンスパフォーマンスの表現はそれとはちょっと違っていた。
それは草野がもう一つ大きなテーマとして抱えていた「富士山」に近かった。静かで動かぬ雄大な不二の山、いったん噴火を始めるだれにも止めることのできない火砕流。そういう静けさと轟音が混じり合って聞こえてくる身体表現だった。また、パフォーマーの横井睦美さんや鈴木可奈子さん(このお二人がまたステキ!)、ジャズピアニストの村山貴さん、そうして高部葉子さんらの発する息の強弱、呼吸の長短、言葉の創る遠近、衣装が抱えこむ空気感が、詩の言葉と重なり合うように同時進行し、しかし、あるときには敢えてはぐれながら表情をつくっていた。
そうしてこの日のフィニッシュ、2年ぶりに再会を果たしたHさんと4年ぶりのKさんとでボジョレーで乾杯。三人で喋りまくって夜が更ける。
というわけで、鳥居の鞄を持って、クリスマスカードを創り、お寺を二軒もハシゴして、ワインで乾杯した平野の長い一日が終わった。
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